不機嫌なジェミニ
『D』の部屋に戻ると、ジンさんと蘭子さんは居なかった。
きっと外での打ち合わせや接待なんかなんだろう。

私が帰る準備をしていると、

「さっきはごめん」

とセイジさんが隣に立って私の顔をみた。

「いいえ。私も…変に怒ってすみませんでした。」

「トウコちゃん。…不安な事があったらジンさんと少し話したほうがいいよ。」

「…はい。お先に失礼します」

ペコンと頭を下げて部屋を出る。



私は電車に揺られながら

…不安な事だらけで、何を聞いたらいいのかもわからないよ。

と、ため息をつきながら、帰り道を急いだ。


夜、遅い時間にジンさんから電話があった。

「トウコの声が聞きたかった」

と柔らかい声。

また、週末は一緒に過ごせる?と
約束を求めている。

私は幸せモノだ。

恋人のジンさんはとても優しい。

私の不安は私自身に自信がない事。
そう、自分でもわかっている。

ジンさんと週末の約束をしながら、
自分に言い聞かせ、明るい声を作った。
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