タイムリープ
「そんなの気にしないで、お母さん」

私は、小さく細い首を横に振った。

「京都での一人暮らし、だいじょうぶ?梢」

母親は、心配そうな顔で訊ねた。

「だいじょうぶだよ、お母さん。住む場所も見つけたし、大切な友だちもできたから」

そう言って私は、口元をゆるめた。

私の脳裏に優太の姿が浮かび上がった。母親には言えないが、優太とは友だち以上の関係。つまり、私の大切な彼氏だ。

「そう、友だちもできたの」

母親は、安堵の表情を浮かべた。

「できたよ」

私は、うなずいた。

「なんか今日、梢の近況をしれてよかった。大阪の実家を飛び出したから、連絡すらなかったから不安だったの」

母親は、目のふちに溜めて弱々しい声で言った。

「お母さん……」

私の口から、震えた声が漏れた。

家を出て以降、母親に一度も連絡をしなかったことに罪悪感を覚え、私は逃げるように座っていた丸イスから立ち上がって閉めてあった窓を開けた。蝉の鳴き声がうるさく私の耳に聞こえ、住宅街が広がっていた。
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