クールな部長とときめき社内恋愛
肩下までの黒髪を指で軽く整えながら身だしなみを鏡で確認したあと、最後に彼から誕生日プレゼントに貰ったシルバーのハートのネックレスを首につけて、化粧室を後にした。

いつもは車で迎えに来てくれるけど、仕事終わりだし、たまにはお店で待ち合せるのもいいかもしれない。

ビルの中にはホテルもあるから、お酒を飲んだら今日はそのまま泊まることになるかも。久しぶりにふたりで週末を過ごせることをエレベーターの中でうれしく思いながら、レストランにたどり着いた。

ウェイターに案内されたのは、綺麗な夜景を見ることができる窓際のテーブル席。そこには、すでに恋人の晃久《みつひさ》さんが座っていた。

「お待たせ」

椅子に手をかけながらそっと声をかけると、彼はいつもの優しい笑みをわたしに見せる。
でも、今日は少しだけ元気がないような気がした。仕事が大変で、疲れているのかもしれない。

笑顔の後すぐにわたしから目を逸らした晃久さんは、「メニューを頼もうか」と穏やかに言ってウェイターを呼んだ。

倉山《くらやま》晃久さんとの出会いは、わたしが大学二年生のとき。
遊ぶ約束をしていた友達から待ち合わせに遅れるという連絡がきて、時間潰しに入った駅前のカフェでわたしが着こうとした隣のテーブルにいたのが彼だった。

茶色いボトムスにシャツとジャケット、整った顔立ちに黒髪で落ち着いた雰囲気の男性で、かっこいい人だなと思った。
< 2 / 151 >

この作品をシェア

pagetop