昼下がりの情事(よしなしごと)
Chapter 1 *志郎*

ある土曜日のうららかな昼下がり。

天野(あまの) 志郎(しろう)は、某高級ホテルのロビーから連なるティーラウンジで、一点の曇りもなく磨き込まれた、巨大な一枚ガラスの窓の外に広がる庭園を見つめた。

いや、違う……窓の外ではなく「巨大な一枚ガラス」を見ていた。

……こんな大きなガラス、搬入するの大変だったろうなぁ。

……いや、それより、こんな壁一面に設置して、耐震はクリアしてるのだろうか?

……いやいやいや、こんな一流ホテルが「耐震偽装」なんてするわけないだろー。

……だけど、そういうのって得てして「えっ、こんな大企業がっ⁉︎」ってとこが出来心でやっちまうんだよなー。

こんなしょうもないことを考えていたのは、なにも彼が設計事務所を営んでいるからではない。

約束の時間よりかなり早く着いてしまって、ただただヒマだったからだ。

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