意地悪な彼ととろ甘オフィス


お風呂を済ませて部屋にあがる。

ベッドに座り、成瀬さんの頭痛は治まっただろうか……となんとなく考えていると、開けてあった窓の外から話し声が聞こえてきた。

男の人の声が気になり、窓から覗く。
暗い夜道には人影がふたつあり、そのひとつが成瀬さんだとすぐにわかった。

私を送ってから今までどこかに行っていたのだろうか。
だとしたらもう二時間近く経ってるけど……と思いながら眺めて、もうひとつの人影が髪の長い女の人だと気付く。

暗くて顔立ちまではわからないけれど今日の飲み会にいた女性ではなくて、なんていうか夜の香りが似合う雰囲気を感じた。

あの人に会いに行ってたんだ。

そう思うと同時にチクリと傷んだ胸に顔をしかめていると、成瀬さんが家に入っていく。

その足取りはフラフラしていて、酔っているのかなって眺めていたとき。
突然、女性がこちらを見上げるからギクッと胸が跳ね上がった。

部屋には明かりがついているし、私が覗いていたことは女性から見れば一目瞭然だったんだろう。実際、見ていたわけだしいいわけもできない。

こんなこと知られたら、成瀬さんにだってまた嫌な顔をされてしまう……と、ひとり、どうしようと困っていると、女性は私に向かって手招きをした。

ここまで来い、と言われているように感じ……若干の怖さはあったものの、指示に従う。
とりあえず、覗いていたことは謝らないとダメだ。

階段を下りビクビクしながらも外に出ると、女性はうちの前に位置を移していた。

成瀬さんはもう家に入ったんだろう。
そこにホッとしながらも、門から出て女性の前に立ち……そこであれ?と思う。

上から見ていたときよりも、だいぶ長身だった。
ガタイがしっかりしていて、骨張っている。

白いブラウスに紫色のストール、そして黒いタイトスカート。足元は黒のピンヒールを履いていて、こうして並ぶと私よりも二十センチほど高い。

顔立ちは整っていて美人で……圧倒されるような華々しいオーラがあった。
成瀬さんと同じ側の人間だ。



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