意地悪な彼ととろ甘オフィス
「……そんなバカップルみたいなことしたくない」
眉を寄せハッキリと断ると、一度チョコを手に戻した響哉くんは「なんで?」と聞く。
「寧々さんにはできたのに、俺にできない理由は?」
女性と男性の違いとか、シチュエーションとか色々ある。
第一に、言ったとおり、バカップルみたいですごく嫌だ。
でも、こんなふうに聞かれてしまうと、どの理由も弱い気がした。
「……ない」
「じゃあ、できるよね」
「響哉くん、せっかくカッコいいのに趣向がなんか残念って言われたことない?」
「さぁ。淡泊すぎるとはよく言われてたけど」
今までの恋愛とか、なんとなくタブーに感じて聞いていない。
色んな付き合いがあったんだとは思う。
でも、淡泊って……。
恋人になってからの響哉くんは、どこを切り取ったってそうは思えない。むしろ呆れるくらいに熱情型だ。
にわかに信じられずにいる私を見て、響哉くんはバツが悪そうに笑った。
「好きじゃなかったしどうでもよかったんだよ。俺、恋って明日香にしかしたことないから。
だから……まぁ、明日香がいうようにバカップルみたいなことしないでここまで来たから、その反動なのかも。明日香とは、恋人がするようなこと全部やりたい。俺のこと、中三男子だと思ってくれていいよ」
……だから。
そういうことを、そんなキラキラした顔で言うのはやめてほしい。
そんな適当な付き合い方は相手の女性にも失礼だと思うのに、言葉に出せない。
結局、惚れた弱味なのか、私にもその反動とやらが実はあるのか。
奪ったトリュフを、響哉くんの口に押し付け、そこに唇もくっつける。
視点が定まらないような至近距離。
響哉くんがニヤッと笑った気がして離れようとすると、そのまま後頭部を押さえつけられ――。