お見合いさせられました!
「五十嵐くんの溺愛っぷりが凄くて思わず…。あははは!」

無表情部長はお腹を抱えて笑っている。

すると、フロア全体がシーンっと静まり返った。
あれ?
今、部長なんて言った?

部長の言葉を必死に思い返す。

『五十嵐くんの溺愛っぷり』…!?

ちょーっと部長!
なんですか!?
溺愛っぷりって!?

しかも、こんなところで言わなくてもいいじゃないですか!?
みんなに聞かれちゃってるじゃないですか!?

途端にフロアのあちこちから、「えーっ!?」と、驚愕の声が響き渡る。

私の顔は沸騰して湯気でも出てるんじゃないかってくらいに熱い。
顔だけじゃなく、身体全体がカッと熱くなっている。
あまりの熱さにクラクラして倒れてしまいそうだ。
いや、もういっそのこと、倒れて記憶を消し去りたいくらいに恥ずかしい。

五十嵐さんはそんな私を見て、楽しそうに目を細めた。


「ほら、行くぞ」

いつの間にか五十嵐さんに手を握られ、床に落としたバッグを拾われて、目の前に差し出された。
咄嗟にバッグを握りしめると、五十嵐さんは私を引っ張ってフロアを出ていく。

あぁ~、なんかこんなこと、前にもあったな~なんて、呑気に考えていた。
そうそう、確か空港で同じように引っ張られて歩いたっけ。
大きな背中についていくのが精一杯で…って思い出にふけってる場合じゃなかった~!!


「五十嵐さん!手っ!っていうか、さっきのはなんですか!?」


「今さらなに言ってんだよ。後ろの声聞こえないのか?」







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