ライアーピース



どのくらい泣いたんだろう。


気付けばグラウンドに笛の音が響く。


窓が開け放たれているであろう
音楽室から歌が聞こえる。


陸は私をじっと
見つめているだけだった。


「・・・どこに行くの?陸」


ようやく言葉を発せられた私の声に、
陸がヒュッと息を吸う。


「言えない」


「どうしても教えてくれないの?」


「俺を・・・探してみろよ。
 俺は新しい道を進む。
 その先にお前がいるかどうかは
 わからない。だけどきっと、
 これが運命なら、
 きっとまた必ず会えるから」


また必ず?


必ず、なんて。

絶対、なんて。あるはずがない。


人はそういうものでしょう?


『ゆーびきーりげーんまーん』


あの時は、永遠を信じてた。
約束は固いものだと信じていた。


あの頃に戻れたなら、
私はそんな約束はするなと、
自分に言い聞かせていたかもしれない。


「ありがとな。こんなになった
 俺を好きになってくれて」


陸はその言葉を残して、
私の頭をそっと撫でた。


その手の感触がなくなると、
陸はゆっくり歩きだした。


バタン、と鈍い音がして、
私はその音と共に崩れ落ちた。




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