ライアーピース



一日の講義が終わり、
自分の家へと向かう。


本当は歩夢のところに行くんだけれど、
陸のことが気になってそれどころじゃなかった。


しばらく一人になりたい。


歩夢からのプロポーズのことも、
陸の女遊びのことも、
全てが私の頭を悩ませる。


まあ、プロポーズなんて
幸せすぎるけど・・・。


ベッドに身を投げて
ふぅっとため息をつく。


このまま眠りたい。
全てを投げ出して眠りたい。


そんな気分に陥った時、
ケータイが鳴った。


「もしもし」


≪若葉?今家にいるの?≫


歩夢の声がした。
そうか、歩夢も帰ってきたんだね。


私は仰向けに寝そべって天井を見つめた。


あのプロポーズの日から、
私はなんとなく気まずさを感じていた。


歩夢は何事もなかったかのように
普通に接してくれるんだけど、
それが私のプレッシャーとなった。


嬉しいんだけど、答えを出せないでいる私を、
歩夢はどう思ってるんだろう・・・。


≪そっち、行ってもいい?≫


「あ・・・私がそっちに行くよ?」



≪女の子一人じゃ危ないからダメ。俺が行くよ≫


「ありがとう・・・」


電話を切ると、私はノロノロと
立ちあがって、財布とケータイを持って外に出た。


歩夢がくるなら、
何か買い物してこよう。


近くのコンビニに寄って、
おつまみと飲み物を買う。


お店を出て空を見あげると、
満月が光っていた。


月に向かって手を伸ばす私。


こうして見ると
月がすっぱりと手に収まってるみたい。


「綺麗・・・」


私が空を見あげていると、
後ろから誰かに抱きしめられた。


< 130 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop