ライアーピース



「あいつ、誰?」


学校の帰り道、陸がふと私に聞いてきた。


「あいつって?」


「ほら、お昼ん時の」


「ああ、新海歩夢。
 私の隣の席の男子」


「へえ。仲良くなったの?」


「ううん、別に?」


「・・・そっか」





え、何?
これはひょっとして・・・。


“ヤキモチ”ってやつ!?


陸の方を見ると、
口を尖らせて仏頂面をしていた。



なにこれ。嬉しすぎるんですけど!?


もちろん“ヤキモチ”を
やかれることも人生初。


陸の意外な一面を知れたような気がした。


もっと、もっとこの顔を見ていたい。


できれば、もっと別な陸も見てみたい。


泣いたり、

怒ったり、

笑ったり、

落ち込んでたり。



そういう陸を知りたくなった。


会えなかった9年間の溝を埋めていきたい。


私はそのために、
こうして嘘をつき続けるんだ。



そう思うと手放しでは喜べなくなって、
息が出来なくなるような感覚に陥っていた。






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