ライアーピース
教室についた途端、
歩夢が私のところへ来た。
「おい、二宮若葉」
「何?つーか、
フルネームやめようよ」
「おう、若葉」
「そっちかい」
歩夢はちらちらと廊下を見据えると、
私に視線を戻して口を開いた。
「あいつ!あの~・・・
佐々木陸ってやつ!
お前ら付き合ってるって本当か?」
「なんで?」
「だって、似合ってねえじゃん。
お前男みたいだし、あいつはなんかひ弱そうだし」
確かに。
私は男みたいってよく言われる。
けど陸がひ弱!?
一体どこを見てそんなこと言ってんだか・・・。
でも、似合わないって言われて
少し胸が痛む。
そうだよ。陸に私は似合わない。
私にはもったいないくらい陸はかっこいい。
「悪い?」
「あいつじゃなくて、俺を選べよ」
「えっ・・・?」
歩夢は私の目をじっと見つめて、
真剣な表情を見せた。
「な、なんで?何急にそんな冗談・・・」
「冗談じゃねえ。俺は本気だ。
前も言ったろ。惚れた女は自分のものにするって」
「そんなこと言われても・・・」
なにこれ。告白?
告白されてうれしくないわけがない。
やっと私にもモテ期がきた?
・・・でも、正直困る。
私は・・・私は・・・。
「ごめん。たとえ陸と会ってなかったとしても、
歩夢を好きになることは多分ない」
私がそう言うと、歩夢は
呆然としたまま固まってしまった。