ライアーピース



陸は真剣な表情を見せた。


耳はまだ、赤い。


ううん、さっきよりも増して赤い。


私と陸は付き合い始めてから今まで、
手を繋ぐくらいだったから、


まさか陸の口からこんな
言葉が出るなんて思いもしなかった。


私の頭の中はキスまで
到達していないんだけど・・・。


急にそんなことを言われて
あからさまに戸惑う私。


陸の方を見れなくて陸の足元を見る。


あ、足、意外と大きいんだなぁ。
・・・なんて言ってる場合じゃない!!


「若葉・・・?大丈夫か?
 嫌なら別に・・・」


「ううん、い、嫌じゃない!
 嫌じゃないんだけどでも・・・」


なんていうのかな?
まだ心の整理がつかないままなんだよね。


「ごめんな。なんか、俺焦りすぎて
 ・・・かっこ悪ぃ・・・」


陸はその場にしゃがみ込んだ。


私も陸の目線に合わせてしゃがみ込む。


なんだか初めてのことだらけで
キャパオーバーしそう。






「俺、記憶なくなんの怖くてさ」


そう、陸が話し始めた。


「うん」


「毎朝、毎朝、お前のこと忘れてるのも、
 お前を傷つけてやしないかって不安になる」


「うん」


「今ここでキスしても、
 明日には忘れてしまうなんて怖くてさ」






急にさっきまでの照れ臭さが消えた。


陸も、私も。




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