ライアーピース




声をかけてきた女の子は、
東高の制服を着ていた。


黒髪ロングのストレートで綺麗な髪。
お人形さんみたいに大きい目。


華奢な体つきの女の子は
奥を覗くように背伸びをした。


「あの、陸なら別クラスですけど」


「そうなん?じゃあ
 伝えておいてくれへん?」


「は、はあ。何を?」


「三浦唯が来たって」


「あっ・・・」





三浦・・・“唯”?





もしかして、陸の言ってた
彼女ってこの子・・・?


唯ははっと何かに気づいたような顔をして
私をじっと見つめた。



「あんた・・・もしかして、二宮若葉?」


「えっ?」


「違うん?」


「いや、私だけど、
 なんで知って・・・」


「・・・あんたじゃ、陸と釣り合わん」




ふっと鼻で笑う唯。


何この子、一体なんだっていうの?


「陸を返して」


「なっ・・・返すって何よ」


「陸はうちのもんや。あんたのやない」



関西の訛り口調に気圧される。


「り、陸は私と・・・」


「うちが陸の彼女や。陸、どこにおるん?」


陸を呼んだりしたら、唯にとられてしまう。


陸は迷いなく唯を求めるだろう。


絶対に教えたくない。・・・
って、あれ?なんで私、こんな必死に・・・・。




「おーい、唯ちゃーん!
 佐々木陸連れてきたよ~!!」


遠くから歩夢の声が聞こえた。


その声の方向を見ると、
メイド服姿をした歩夢が陸の手を引いている。


「り・・・」


「陸!!」


私の声を遮るように、
唯は陸の名前を呼ぶと駆け寄った。


「唯?唯!!」


「陸!会いたかった!!」


唯はそう言うと、
いきなり陸にキスをした。


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