フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~

5-2

軽く食事をとると、また私たちの周りには人が集まってきた。

どうやら食事が終わるまで声をかけるのを待っていてくれたらしい。

圭介の周りには取引先の偉い人が交代で話しかけてきている。
修一郎さんのもとにもIHARAとお近づきになりたい企業関係者がひっきりなしに声をかけてくる。
必死で笑顔を取り繕っていたから彼らが近づいてきたことに気が付かなかった。

「ノエルさん、懐かしい人を連れてきてさしあげたわ」

すぐ後ろで聞こえる女性の声に振り向くと、私のすぐ後ろにあの片岡さんが笑顔で立っていた。
修一郎さんも気が付いたようで、目を細めて険しい顔をした。

何か企んでる、そう確信した瞬間それは彼女の後ろにいた男性の登場で証明された。

「ノエル、久しぶりだね。あれからだから8年振りか?」

「昂輝さん・・・」

そこにいたのは神崎昂輝(こうき)、安堂家の遠縁にあたる男性で今は38歳になっているはず。
相変わらず色気のある顔立ち。長身で肩幅があり逞しい。

私が会いたくなかった人。
確か、数年前からカナダにいると聞いていたのに。震える両手を握りしめた。

みるみるうちに私の表情が凍り付いていくのわかったのか
「ノエル、こちらの方は?」と修一郎さんが声をかけてきた。

私が声を発する前に片岡さんが勝ち誇ったように高らかに言った。

「ノエルさんの元婚約者ですわ」

え?っと息をのむような声が修一郎さんから洩れる。

「ノエルさんって婚約と婚約破棄を繰り返していらっしゃるみたいね。今回の修一郎さんとの婚約破棄はいつ頃なの?」

勝ち誇ったような片岡さんの声がした。
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