フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「そう、あの如月コーポレーション」

井原さんは頷いた。

如月コーポレーションの関係者。如月コーポレーションの次男。

だとしたらケイの事を知っていてもおかしくはない。
そこから私の事をたどるのは一般人ではないこの人達にとってはたやすいことだろう。

「あれ?もしかして全然知らなかったとか?絵瑠さん、大丈夫ですか?」

明らかに様子がおかしい私の顔を井原さんはのぞき込んできた。

「大丈夫って言いたいところですけど、あまり大丈夫ではないかな」

正直に告げて私は少し目を閉じて2、3度深呼吸をした。

大きく息を吐いてから
「井原さんはどうしてここに?」
と聞いてみた。

「ここに来ればあなたに会えるかなと思って」
にこやかな井原さんの言い方に少しムッとする。

「本気で言ってますか?」

「ごめん、正直に言ってそれは半分かな。安堂圭介さんに会いたかったっていうのが本当」

ケイに?
「それはなぜ?」

「キミのことが気に入ったから、安堂さんに俺がキミにアプローチをするってことを伝えておこうかと思ってね」

私は井原さんの言葉の真意がわからず彼の漆黒の瞳をじっと見つめた。

「なぜ私を誘うのにケイの許可が必要なの?」

「だって君は安堂圭介さんの大切な人だろう?」
井原さんは即答した。

「確かに私たちはお互いを大切な人だと思ってる」
言葉を慎重に選んで返事をした。

「だから恨まれないように正々堂々と挑もうかと思ってね」
にっこりと笑ってスマホを取り出した。

「後で連絡するから休みの日を教えて。まずはパンプスを買いに行こう」

そんな井原さんの様子に少しホッとする。
彼は私の秘密に気が付いていないのかもしれない。
それと同時に『正々堂々と挑む』という井原さんの言い方にもなぜかホッとして気が緩んだ。

パンプスを弁償してもらい、ランチでもご馳走になれば彼の気も済むだろう。

「わかりました。あまり土日の休みはないんですけど、いいですか?」

私は少しだけ警戒を解いた。
私の嫌いな世界の人のはずなのに、初対面の時のような嫌な感じはない。
強引に私を誘っているけれど、あまり嫌な感じがしないのはなぜだろう。

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