フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~
「ノエルちゃん」

専務室に戻り佐々木さんに話しかけられた。

「樺山さんの処分のことなんだけど」

「はい」
私は背を正した。

「樺山さんの父親は『白樺ツーリスト』の社長なんだ。今朝一番で正式な謝罪があったよ。うちは樺山さんを解雇したんだけど、ノエルちゃんはこの後どうしたい?」

「え?」

「訴えることもできるし、慰謝料請求だってできる。ノエルちゃんは被害者だからね」

「そんな必要はありません。でも、できるならもう私や修一郎さんに近付かないで欲しいです」

私は俯いた。

樺山さんは間違ったやり方をしてしまったけど、修一郎さんの事が好きだった。後から出てきた私が憎いと思う気持ちは理解できる。

「わかった。この先のことは任せて。それと、会社の取引とかノエルちゃんは心配しなくていいからね。愛理も心配してたよ。今日は休んでもよかったのに」
佐々木さんは固い表情だ。

「ありがとうございます。でも、仕事も途中でしたし家で休んでいても落ち着かないので」

「ごめんね、修一郎君がモテるのはわかっていたし、不要な縁談除けなんて軽く考えていたわけじゃないんだけど。これからはもっと気を付けるからね」

佐々木さんのきつく噛みしめた口元に私は申し訳なく感じる。

「昨日は完全に私の不注意だったんです。皆さんが悪いわけじゃありません。それに・・・あ、ごめんなさい。なんでもないです」

私、今何を言おうとしたんだろう。

それに・・・
何があっても私がこれからも修一郎さんと一緒にいたいんです
とか・・・?

そんな私の様子に気が付いたのかどうかわからないけど、佐々木さんがフッと笑った気がする。
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