オトナの恋は礼儀知らず
 寝ぼけ眼で起きたのは4時くらいだった。

 話し合いをして話し合いにならないと悟った時の呆然ぶりに狼狽ぶり。
 もう二度と味わいたくない。

 そのせいで家に帰ったのに何も出来ず、気づけば出勤時間。

 服が同じではまずい。
 そんなことにも気が回らなかった。

「大恋愛って感じですか?
 心あらずですよ。」

「そんなんじゃないわよ。」

 凝った編み込みの髪の下にある可愛い笑顔を可愛く思えなかった。
 ただの八つ当たりなんだけど。

 えぇ。ダメね。これじゃ。

「ごめんなさい。
 今までにない感じでオーバーフローなの。
 でももう大丈夫。さぁ仕事仕事。」

 友恵の周りを飛び跳ねる可愛い亜里沙に苦笑する。

「何があったかまた教えてくださいね!」

 ちょうど福田くんが出勤してきたところで姿を確認してギクリとする。
 最後の会話が聞こえたらしく突っ込まれた。

「何がです?
 あ、友恵さん今日の服、ちょっと若いですよ。」

 聞かれたのが最後の会話だけで良かった。

 指摘と簡単な手直しをされ、鏡で確認すれば完璧な着こなし。
 さすがだけど好きになれないわ。福田くん。

 腕はいいのよ。
 仕事はきちんとしてるし、慕ってついて来てくれた中の1人だし。

「男関係ですか?
 もし結婚して店辞めるならこの店俺にくださいね。」

「辞めないわよ。」

 辞めないわ。
 福田くんは自分で自分のお店持ちなさいよ。
 あんた男の子でしょ!

 ここのお店をやる時、自分がどれだけ男になりたかったか………。

「いらっしゃいませ〜。
 掛けてお待ちください。」

 入り口で亜里沙の声がした。

 さぁ。仕事よ。仕事。
 男なんていなくても私には仕事があるわ。

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