私にとって初めての恋。

知るということの大切さ

美陽はゆっくりゆっくり言葉を放つ。

「私はずっと信じられなかった。信じなきゃって気持ちとずっと戦ってた気がする」

悠琉は頷きながら静かに聞く。

「悠琉さんが言っていた通り…。受験の邪魔になるかなって思って連絡は控えたの。でもね、私見たの」

美陽の声が震える。
思い出して悲しくなってきた。
しかし、涙を堪えながら話を続けた。

「ある日ね、本屋に行ったら悠琉さんが他の女性と買い物して笑ってるところ…」
「美陽、本屋にいたの?」

悠琉は本屋に行ったのを覚えているようで驚いていた。
美陽はコクンと頷いた。

「それから怖くなった。ヤキモチを妬く自分と悠琉さんに八つ当たりする自分が…。その人は誰?何で私じゃないの?もう、飽きてしまったのって」
「っ…!」

悠琉は一瞬興奮した気持ちを抑え込み、美陽の話を聞くことに徹底した。

「些細なことだと思い込むほど私を追い詰めた。だけど、同級生とだって出かけるかもしれないってその時はまだ少しの希望を信じてた…」
「美陽、俺は…っ」

美陽が悠琉の方を向く。
暗くても分かるほど、悠琉の表情は苦しそうだった。
美陽は笑って言う。

「その時に、すぐに言ったら良かったのかなって今でも思うことがあるよ。でも、私が臆病で聞くのが怖かったからこんな事になっちゃった…」

それでも救われたことはあった、と美陽は呟くように言った。
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