恋愛ノスタルジー
「やっとっていっても……それまで好きだったのは凌央さんで圭吾さんを好きになったのはまだ数日……」

「そこが鈍いのよ!アンタさあ、圭吾さんとお見合いして婚約して一緒に住んでるのって、好きだからじゃないの?!いくらお父さんの決めた相手でも、好きだから先に同棲したんじゃないの?一ミリも好きじゃなかったら結婚もしていないのに一緒に住まないでしょう?」

「そ、れは……そうだけど……」

でも、私は凌央さんを好きになって……。

凌央さんへの想いが恋じゃなかったというのは、絶対に違うと思う。

あの時確かに私は凌央さんを好きだったもの。

だからといって好きの大きさや深さとか、そういうレベル的に考えれば考えるほど、分からなくなる。

「あのさ、私、明日から地元帰るの。だからこの正月休みに彩を助けてあげられる日は今日しかないの。分かる?!」

……美月は関西出身で、お正月休みは必ず実家に帰省する。

「わ、分かる」

これ以上美月を怒らせたくなかった私は、どう助けてもらえるのか分かってなかったけどコクンと頷いた。

「じゃあ貸して」

「何を?」

「スマホ。圭吾さんに話があるの、私」

な、なんの話が?!

恐ろしさのあまり硬直する私の鼻スレスレに美月の手がニュッと伸びる。

「早く!」

「は、はい!」

慌ててテーブルの上に出していたスマホを美月の手の平に乗せると、彼女はスッと立ち上がった。
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