恋愛ノスタルジー
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一ヶ月後、凌央さんの個展前日。

「迫力半端ないね」

手伝いに駆けつけてくれた美月が、ギャラリーの中に展示された凌央さんの画を見渡して眼を丸くした。

「本人から漂う雰囲気はただの陽気なイケメンって感じだったけど」

「美月ったら!さっき初めて会ったばかりなのに遠慮なさすぎ!」

私が軽く睨むと美月はシラーッと私から視線を逸らした。

「それにあの立花さん?あんたを丸裸にしようとした」

ギャラリー内は声が響くから、余計にドキッとする。

「み、美月っ」

案の定、アキさんがギョッとしたようにこちらを見た。

けれど美月はお構いなしで、腰に手を当てて凌央さんの画を見つめたまま続ける。

「あの人……バカ真面目なんだね。なんか眼を見てたらそう感じたわ。あんたを誤解したのも真っ直ぐすぎるゆえだね」

「うん……」

そこでようやくアキさんがクスリと笑った。

「優ちゃんはね、ガキ大将だったらしいよ。曲がったことや卑怯な事が大嫌いで、直ぐに怒って追いかけ回してたらしいよ。可愛いのに喧嘩っ早いし」

……いくらなんでも子供の時の話を未だにされるなんて、可哀想……。

驚く私の隣で美月が、

「あら、私と一緒。気が合いそう」

美月ったら。

でも、立花さんの真っ直ぐさと美月の正義感の強いところは何だか似ている。

ほんと、気が合うかもしれないな。

「あ、そうだ」

その時、美月が思い出したように私を見た。
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