恋愛ノスタルジー
そんな態度が不自然に見えたのか、成瀬さんの追求は続く。

「えー、逆に問題じゃない?!」

……まあ……世間一般ではそうなる。

でも圭吾さんからはオッケイが出ている。変な話だけれど。

「気になるんだけど、凄く」

いつかのように成瀬さんの瞳がキラリと光る。

「また今度相談に乗ってください」

私がそう言うと成瀬さんは笑いながらコクコクと頷いた。

「なんか特殊そうだけど……了解。あ、そう言えば営業部から聞いたんだけど麗し野タウンの見学&説明会のウェブ予約、出だし好調らしいよ」

「そうなんですか?!嬉しいですね!」

思わず瞳を輝かせてしまった私に、成瀬さんは更にフフフと笑った。

「さあ、私は次の企画書チェックするわ。じゃあまた明日ね」

「お疲れさまです!」

成瀬さんが自分のデスクに戻っていき、私は帰り支度を終えて席を立った。

凌央さんは遅くなるみたいだから、一度帰ろう。

……つくづく思う。

事件が起こる前というのは、どうしてこんなにも何の予感もせず静かなんだろう。

いつもいつも、事が起こってから私は後悔する。

自分の浅はかさを。

時計を見ると丁度午後五時半だった。
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