御曹司様はシンデレラを溺愛する



「姫花、ありがとう。これお土産」


「…うん、お土産ありがとう。着物、返すから待ってて」


「何、何?その歯切れの悪さ。それに浮かない顔」


身代わりで合同お見合いパーティー出た次の日、私の狭いマンションに訪ねて来た優里亜は、私を押しのけて中に入って行き、床に敷いてあるクッションの上に座った。


そして、部屋の入り口に立つ私に向けて、顎で真向かいに座るよう促す。

座るなり、さぁ、話せと言わんばかりに睨みをきかせてきた。


「ごめん」


何に対してなのか理由も言わず、真っ先に顔の前で両手を合わせ謝った。


「何のごめんなの?」


綺麗に整えられた爪先を触りながら、こちらが本題を話す前に優里亜は本題をさっさと言えと言う。


昔から優里亜はこうだった。


「2つのごめんがあります。1つは草履を片方無くしました。2つ目は…」


合同お見合いでやらかしたとは言いにくい。


「2つ目は何?」


「2つ目は…多分、向こうはもう忘れていると思うけど、念のため謝っておく」


「向こうはって?忘れているって何?浮かない顔の原因ね」


先程とは違い、他人事のように興味津々で前のめりになりながら、目がキラキラしている。
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