次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
 年は20代前半の同じくらいの青年だが、瞳の奥には剣呑そうな光が見て取れる。
 手には数枚の紙と紙幣。
「どうだ、ひとつ乗らないか」
 にやけた笑いを口に浮かべた男はクーデノムにそう囁きかける。
 手に持った紙は試合の対戦表。
 男の背後には同じような男達がいろんな人に声をかけていた。
 剣術の試合に賭けを持ちかけているらしい。
 覇気のない雰囲気と皆から言われているクーデノムは、そういう男達にとってはいいカモなんだろう。
 一般市民から見れば一応、上等なモノを着込んでいる。
「勝てば2倍以上の配当が約束されるよ。そうだな…この試合なんかは集中してるけど、こいつは2倍、だけど相手には5倍の配当がつくぞ」
 対戦表の名前を見たクーデノムは微笑する。
「それじゃあ…」
 そして、口にしたのは男達の予想を裏切った答え。
「その5倍の方に、500ルートで」
「え? ご、500ルート!!?」
「そう。勝ったら2500だね」
 慌てふためく男に念押しして賭金の500ルートはちゃんと持ってるからと、荷物の中の現金と換金すれば価値のありそうな装飾品を取り出し笑って見せた。
 一般の平均年収が1000ルートほど。
 たいていの者は1ルート以下の金額で賭けを楽しんでいる。
 思わぬ大口に慌ててる男を横目に見ながら、試合会場に目を向けるクーデノム。
 そして始まった試合は、大斧をかついだ大男に対して長剣を持った細身の青年。長い茶髪を一つに束ねた姿はよく見知っている、マキセ=トランタだ。
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