次期王の花嫁 ~真面目次期王は蒼眼王女に落とされたい?~(次期王の行方2) 
 バンッと勢いよく扉が開かれ、一人の男の子が現れる。
「クーデノム様、マキセ様、お久し振りです。お迎えにあがりましたー」
 きちんと礼をして言ったのはルクウートでも会ったエイーナ=テニトラニス。
 この国の王子だ。
「エイーナ、先に行くなんてずるい!」
 声と共に扉を開けて現れたのは、案の定セーラだった。
 勢いよく飛び降りようとしたのだが、すぐ目前にクーデノム達がいるとは思わなかったらしく驚きで一瞬立ちすくみ、歩幅のリズムが狂う。
「きゃあ」
 馬車からの段に足を踏み外しまたもやコケそうになった所に、クーデノムはセーラを抱きとめた。
「相変わらずですね」
クーデノムの胸にしがみつくセーラに向かい、笑いを抑えることなく言い放つ。
「ク、クーデノムにしがみつくための計画よ」
「計画ですか?」
「そうよ」
 顔を赤くしながらも強気で言い放つセーラをそのまま抱え上げた。
「な、なにー?」
 バタバタと慌てるセーラを抱えたクーデノムは馬車の扉を開いて中へ入ると彼女を椅子に座らせた。
 さすが王宮の馬車。広く綺麗な内装に柔らかいクッションだ。
「今回は傷めなかったようですね」
 セーラにひざまづくようにして足を手に取るクーデノムに、セーラは声も出せず大きく肯く。
 彼女の素直な態度に笑った。
 その体勢のままクーデノムはセーラと視線を合わせ、尋ねる。
「セーラ姫は、私を落とす自信はおありですか?」
「…ある!」
「では、落としてください」
 勢いのままはっきり口にする姫の手を取り、候に口づけした。

「何度も落とされてるのは姉上でしょうに」
 中から聞こえる言葉に、馬車の外で呟いたのはエイーナ。
 その言葉に吹き出しながらポンと彼の頭に手を置いたマキセ。
「引きずり落とす手もあるよ」
「なるほど」
 おおーい、入ってもいいかと中の2人に声をかけ、マキセとエイーナも馬車に乗りこみ、テニトラニスの王城へと向かった。

          【完】
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