☆真実の“愛”―ただ、愛してる―3


……愛とは、一体、なんですか?


そう問いた、少女がいた。


問われた、人は少女に言う。


『愛とは、相手の幸せを願うもののことだよ。難しくても、それが愛』


常に相手の幸せを願っている沙耶は、自分を犠牲にしてでも、他人が幸せになることを願っている。


そして、相馬はそんな沙耶に、自分が幸せになれるように、我が儘になれというのだ。


そんなに簡単に人間変われたら、苦労はしてない。


心を壊してまで、別れを選ぼうとする沙耶と、


他人を犠牲にしても、沙耶を愛する相馬。


『あの人が幸せだったら、私はそれでいい』


前世でも、最期までそう言って、微笑んでいた自分の幸せを犠牲にしてまで、多くの人間を護った夕蘭。


そんな彼女を信じてやれなくて、失い、後悔した草志。


昔から続く想いが、彼らを引き寄せたならば。


今度こそ、幸せになるために出逢った。


あの日、沙耶が苦手なパーティに進んでいったのも、それが、相馬が絶対に参加しなければならないパーティだったことも、全部、全部、繋がっていた。


あの日がなければ、二人は出会えなかった。


繰り返す、若き日の運命。


昔、夢見た世界で、生きている私達。


全てが再び動き出したあの日から、彼らは約束の続きを、夢の続きを果たすためにこの世界に生まれ落ちた。


誰一人と触れることを禁じられた女神と、


愛し合った不老の守り人。


失われていたはずの、遠き日の記憶。


それがなくとも、追い求めていた人と出逢えた奇跡。


背中を預けられる相手が、傍にいるなら。


運命を共に変えられる相手が傍にいるなら。


その人の手を何があっても、離してはいけない。


閉ざされた真実は、信じることで再び、蘇るのだから。


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