あなたの心を❤️で満たして
筑前煮を作り、卵焼きを焼き、お肉で巻いた野菜を炒めて甘辛い味を付ける。
新鮮なブロッコリーのサラダと炊き上がったご飯にはいろんな具を入れて握り、海苔や昆布を巻いて仕上げた。

それらを三段のお重に詰め合わせ、風呂敷に包んでしまえば終わり。



「お気を付けて行ってらっしゃい」


黒沢家専属のタクシーを呼び、乗り込むとそう言われて見送られた。


「行ってきます。廣瀬さんはもう上がっていいですから」


一人でも此処には帰れますと話し、手を振って別れる。

何も言わなくても白沢薬品の研究所に向かって走りだしたタクシーの中で、私はお重を膝に乗せ、ぎゅっとそれを抱きしめた。


この中身を食べている黒沢さんを早く見たい。

「美味い」と囁く声を聞いて、手を合わせる仕草を見てみたい。


それから彼の口から色々と語って欲しいと願う。

私の住んでいた家を彼が購入することになった経緯とか、どんな理由があって縁談を承諾したのか、とか。


とにかく隠されている事実をあからさまにして欲しい。
何も知らないでいる私に謎を解き明かして欲しいーー。



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