あなたの心を❤️で満たして
祖父が生前、私の将来を心配し、勝手に結婚相手を決めていた。

病床の祖母にそれを聞かされた時は驚き、自分が亡くなればその人の元へ嫁ぐ手筈が整っているから…と話した。


『今住んでいる家も人手に渡るから覚悟を決めて往きなさい…』


嘘だと思い、信じられないまま祖母をあの世へと見送ったーー。


その葬儀を済ませてから直ぐ、近所の不動産屋がやって来た。


『亡くなられたお祖母さんから、家を売却してその代金を貴女に支払って下さいと頼まれていました。
既に買い取り手は付きましたので、一週間でこの家を明け渡して下さい』


『えっ!一週間!?』


先には延ばせないと言われ、反論も出来ないまま判子の付いた売却書類を見せられた。

本当だったんだ…と思う私に、買い取り代金は、私名義の銀行口座に振り込まれているからと伝え、引越しが済んだら連絡を下さいと言って帰って行った。


不動産屋が帰った後、ただ一人残された家の中で、ダラダラと溢れ落ちてくる涙を拭うことも出来ずに泣いた。

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