あなたの心を❤️で満たして
旦那様、お願い…
要塞屋敷に帰り着いた後、私はコーヒーを淹れてリビングへ持って行った。
黒沢さんはいつものように分厚い本を片手に読書をしていて、熱心に文字を追っているせいか、私がノックをしても知らん顔で。


（すごい集中力）


これだからずっとあの研究室に閉じこもっていられるんだ。
頭のいい人って、誰もが皆こんな風なんだろうか。


彼の側にカップを置くと、香りで気付いたらしい。
本から顔を上げ、ニコッと笑った。


「ありがとう」


柔らかい声でお礼を言うのを聞いて、胸がトクン…と音を立てる。
研究所で会った時とは違って、今日は朝から清々しくてイケメンさが増している。

その姿を向かい側から眺め、こくっと一口だけコーヒーを飲んだ。


そう言えば、彼に聞いてみようと思っていたことが幾つかあったのだ。

どうして自分と結婚しようと思ったのか、あの美人で補佐役の蒲池さんとはどういう関係なのか…とか。


「あの…」


カップに口を近付けようとしている黒沢さんに声をかけると、彼はその状態のままで視線だけを向けた。

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