あなたの心を❤️で満たして
「……まあ、おかしくはないか」


どうせ行けば着替えさせられてしまうのだ。
だったらセットしやすい状態にしておくのがベストだろう。


「そう言えばメイクは?」


そう思い、同じように行けばやり直されるのだ…と考えた。着たくもない振袖に似合うメイクをされる予定だ。


「ファンデーションだけ塗っておこう」


そこまで済ませたら玄関の呼び鈴が鳴った。
簡単に最終チェックを済ませ、慌ててドアを開けた。



「おはようございます。お支度は整っておられますか?」


三上さんは黒のスーツを着込み、初めてこの家に来た時の様にビシッと背筋を伸ばしている。


「はい。大丈夫です」


そう答えると私の格好を繁々と見つめ、何も言わずに「それでは参りましょう」と踵を返した。


「…あっ、待って下さい」


鍵を閉める前に、もう一度だけあの満開の桜を見たい。
部屋に戻ってあの縦長窓から…と思い振り向いたが、やっぱり止そう…と思い直した。



「どうされましたか?」


背後で不思議そうにする声に振り返り、「何でもないです」と答えた。

< 7 / 283 >

この作品をシェア

pagetop