晩ごはん彼氏
初め
ゆかり「入れてよ。私はここに用があるの」
警備員「お嬢ちゃんの頼みでも、ここは会員の人しか入れないスーパーだからね。」
ゆかり「だから、そこをなんとか入れてよって、さっきから頼んでるじゃない」
警備員「だからも何もここは会員証がないと、誰であっても入れないの。だから、お嬢ちゃんはおとなしく、隣のカウンターで会員証を作ってから来なよ。」
ゆかり「その会員証が作るものを何も持ってないから、何とか入れてって言ってるじゃない。」
警備員「それはできない決まりなんだよ。」
ゆかり「決まり、決まりって大人はそればっかり。」
警備員「そんなことを言っても。入れられないものは入れられないんだよ。だから、帰った、帰った。」
豊「これは何の騒ぎだい?」
警備員「社長?どうしてここに?」
豊「現場視察に来たんだよ。きちんと仕事をしているようで、安心したよ。
かわいいお嬢さん、そんなんにこの中に入りたい?」
ゆかり「ええ、入りたいわ」
豊「なら、取引をしようか?」
ゆかり「取引?どういうこと?」
豊「話は簡単だ。僕と一緒にスーパーに入ろう。それで僕の指定した料理を作ってもらう。
食材は自由に選んでいいよ。材料費も僕が持とう。」
ゆかり「は?どういうこと?」
豊「僕の家で料理を作ってほしいんだよ。今、家政婦さんが辞めたばかりで、困っているんだ。出来合いのお惣菜もそろそろ飽きてきたしね。このスーパーに入りたいということはそれなりに料理に興味があるんだろう?違うかい?」
ゆかり「ええ、料理は得意よ。だからといって、あなたのできすぎた話に乗るつもりはないわ。」
豊「おやおや、それは嫌われたもんだね。じゃあ、スーパーに入るのをあきらめるかい?実を言うと、僕はこの警備会社の社長だから、君一人をつまみ出すのは簡単なんだよ。そこを取引して、入る権利が手に入るならそちらの方が有益じゃないかな?どうだい?」
ゆかり「そこまで言うなら分かったわ。その条件、のむわ。一緒にスーパーに入る。」
豊「じゃあ、取引成立だ。さぁ、一緒に入ろうか?」
ゆかり「だからって、なんで手を繋ぐことになるの?」
豊「これは保険だよ。君が中に入って、悪さをしないようにね。途中で逃げられると僕の夕飯がなくなるからね。それぐらいの条件は必要だろう。」
ゆかり「確かに、そうね。さすが、警備会社の社長さんね。悪さはしないつもりだけど、入れてもらうお礼に手ぐらい繋いでも減るもんじゃないし、いいわよ。」
豊「高飛車なお嬢さんは好きだよ。手なずける期間が楽しいからね。」
ゆかり「気持ち悪いこと言ってないで、さっさと行くわよ。ここまで来るのにどれだけ時間かかっているのか、わかってるの?」
豊「わかった、わかった。では行こうか、お嬢さん。」
ゆかり「ゆかり。私の名前はゆかり。お嬢さんじゃないわ。」
豊「わかったよ、ゆかり。今日の晩御飯は豚の生姜焼きが食べたいんだ。作れるかい?」
ゆかり「それぐらい、お安い御用よ。あとはそうね、バランス的に味噌汁とサラダね。」
豊「楽しみだな。早速、今晩の夕飯が楽しいものになりそうだ。」
ゆかり「能天気ね。私が毒を盛って、何をするかもわからないのに。」
豊「君はそんなことしない、いやできないかな。こんなに受付の前で騒いで、顔の知れている僕と一緒に手を繋いで買い物をしていたら、目立つからね。何か犯罪が起きたら、真っ先に君が疑われる。だから、そんなバカな真似はしないよ。」
ゆかり「わかってるじゃない、さぁ買い物するわよ。」
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