世界できっと、キミだけが


「紗千!おはよ!」

「おはよう!」


始業式の日。
結局、私はなんの解決策も考えられず、流されるままに学校に来ていた。
海に行って以来菜穂とも会えていなかったし、やっぱり会えて嬉しいと思う。


竜に悪いと思う気持ちと、それでもやっぱり私の居場所を守りたい気持ちがせめぎ合う。


「明日はテストだけど、大丈夫?」

「う…。まぁ、浩太よりは大丈夫かなぁ」

「おい、聞こえたぞ」



後ろから聞こえて来た声に恐る恐る振り向くと恐ろしい顔をした浩太が立っていた。



「こ、怖っ!何よ、その顔」

「紗千が腹立つ事いってっからだろ!」

「本当のことでしょうよ!」

「はぁ!じゃあ、勝負だ!どっちが総合点上か」

「望むところ!」


パチパチと火花が飛び交う。
楽しい。
このなんでもない日常が。
平和で暖かくて。
笑顔の溢れるこの世界が。


私は好きだ。

< 119 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop