世界できっと、キミだけが
「今日はありがとう」
「なにがだ」
あれから、しっかりと海を満喫して二人を送った帰り道。
私は竜にそう言った。
車の中には私と竜二人きり。
私は後部座席で竜の顔は見えないけれど。
「…楽しかったから」
「そうか。なら良かったじゃないか」
「うん…。でも、吉沢さんにも、久住さんにも迷惑かけたなって」
菜穂も浩太も気づいていなかったけれど、ちらりと見れば吉沢さんと久住さんが遠目に私たちを見てくれているのがわかった。
片時も離れず、いつも誰かが。
「私にとっては遊びの時間でも、皆にとっては仕事なのに…」
「いつまでその話を引っ張るつもりだ。その話は来る前にもう完結していたことだろう」
「それはそうだけど…。実際やってみて余計にそう思ったって言うか…」
私が楽しんじゃったぶん、申し訳ないというか。
そんなことは関係ないって、竜は言うんだろうけど。
「ねぇ、これからも竜って呼んでもいい?」
「…は?」
「なんか、呼びやすいし、竜って」
「別に、構わないが」
私はこっそりと笑った。