こけしの恋歌~コイウタ~
今朝頑張って目の下のクマをコンシーラーでうまく隠したと思ったんだけど、失敗したかな…。
いつも以上に時間かけたんだけど。

昨夜レコーディングにかなり時間がかかってしまい、朝方近くに家に帰ってきた。
シャワーを浴びて、酷い顔を直していたら、あっという間に出勤時間を迎えてしまい、睡眠ゼロで仕事をしている。

こんなこと初めてじゃないから、大丈夫だと高を括っていたのかもしれない。

成瀬課長は至近距離から訝しげに私の顔を覗き込む。

「寝てないでしょ?」

バレてる。
完全にバレてる。
この人の視力、5.0くらいなんじゃないかと思ってしまう。

「は…い」

私は苦笑いを浮かべて、目を逸らした。

成瀬課長はため息をひとつついて、私の頭をポンポンと撫でた。
その手は大きくて優しくて暖かい。

「あんまり無理しないで。本当に体調悪くなったら早退していいからね」

成瀬課長の去っていく大きな背中を見つめながら、撫でられた頭を手で触った。
そこだけ熱を帯びていた。
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