こけしの恋歌~コイウタ~
資料室のドアに『使用中』の札をかけて、課長とふたりで中に入った。
課長が電気のスイッチをオンにすると、パッと瞬く間に部屋中が明るくなる。
理路整然と立ち並んだ、たくさんの棚が視界に入る。

「今のうちに営業部には恩を売っておきたいから、探す資料、けっこうあるけど、頑張ろうね」

営業部に恩を売る…。
しばらく考えて納得した。

「そういえば、もうすぐ謝恩会ですね」

社内イベントの一大行事、謝恩会がもうすぐ開催される。
社長をはじめ、上役が全員参加して社員を労うイベントで、ホテルの大ホールを貸し切って行われる大がかりなものだ。

取り仕切るのは総務部と広報部で、課長をはじめ、私たちは裏方として奔走する。

謝恩会のラストはゲームで締めくくる。
それを盛り上げるのが営業部の担当。

総務部の課長として、今のうちに営業部に恩を売って、謝恩会の盛り上げをお願いしようと考えたってところかな。

「今年のゲームは罰ゲームらしいよ」

「罰ゲームですか?」

課長と顔を見合わせて笑ってしまった。

毎年学園祭のような盛り上がりをみせる。
その締めくくりが罰ゲームって、なんだかツボにはまる。

課長もしばらく笑った後、魅力的な目で私をじーっと見ている。

ちょっと笑いすぎたかな。
早く仕事にとりかかろう。

課長の視線から目を逸らすように、探す資料の一覧表に目を向けた。



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