こけしの恋歌~コイウタ~
1時間ほどで打ち合わせは終わり、、一息ついた。

「ウチの女性社員たちが、ここにサクラさんが居るって知ったら、きっと大騒ぎになるでしょうね~」

「サクラさんのことは極秘ですから、社内でも知ってる人間は限られてきます」

レコード会社の人たちは楽しそうにしている。

「ウチの社員がこの前サクラさんの曲を聴いたら泣けるって言ってました」

そんなふうに言ってもらえて有難い。
私のほうが泣きそうになる。

「ありがとうございます」

私は少し赤くなった頬を両手で押さえながら、お礼を言った。

「やっぱりもったいないですね~。ジャケットに表情を載せられないのが残念です」

ジャケットに表情どころか、その姿を載せたことはない。
もちろん、これからも載せる気はない。

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