マンゴーゼリー
部長になると車での通勤が許される。


人より長身のため視線を集めやすく、若くもない自分には満員電車はかなり辛かった。
なので、部長昇進をきっかけに、車通勤へと切り替えていた。


家に着き、車庫に車を入れた後に、家の電気が点いていないの気が付く。



家にいないのか?



もしかしたら、娘や孫に何かあったのかも知れない。そんなことを思いながら携帯を確認するが、妻からの連絡はない。

そのことにホッとしたが、次の疑問が思い浮かぶ。


なぜ、電気が点いていない?



鍵をあけて家に入るが、家の中からは物音一つしない。


靴とスリッパを確認すると、どうやら妻は家にいるらしい。


一つの可能性を思い浮かべつつ寝室へと向かった。



寝室のドアをそっと開けると、予想通りベットで眠る妻がいた。



サイドテーブルには、薬と空のグラスが置いてある。



廊下からの灯りで、顔色を確認しようとしたがよくわからず、とりあえず部屋を出た。



状況から見るに、妻は体調を崩したらしい。


もともと頑張りすぎる性質ではあるし、初孫の世話と久しぶりに一緒に暮らす娘の世話を張り切ったのだろう。
無事に家に帰した安心感で、熱でも出したのかも知れない。



ということは、夕食はないのか・・・・?


台所へ行くと、鍋にカレーが出来上がっていた。
おそらく、体調が悪いにも関わらず、自分のために用意してくれたのだろう。


当然のように米まで炊いてあって、思わず苦笑してしまった。



だが、体調を崩している妻は何を食べるつもりなのだろうか?


外灯がついていなかったことを考えると、妻が寝始めた時は、まだ明るかったのだろう。
そう考えると、妻はずいぶんと長い間何も口にしていないことになる。


冷蔵庫を確認するが、妻が食べられそうなものは入っていなかった。


少し考えた後、車のカギを持って外に出た。
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