夢色メイプルシュガー
「今度は、芽衣さんらしさの溢れるケーキを作ってもらおうかな」
「私らしさ?」
って、何だろう。
考えていると、続いて新たな言葉が降ってきた。
「これは、一種の課題だな。敢えて期限は定めない。テーマを決めて、作品として俺に振舞ってほしいんだ」
課題……。
「それって、勇さんも手伝ってくださるんですよね……?」
そっと窺うように訊ねる。
「いや。作品が完全するまでの間、しばらく俺は席を外させてもらうつもりだ」
「ええっ、私一人で作るんですか!?」
驚きのあまり、叫んでしまった。
だって、まだ2回しかレッスンを受けていないのに一人って……。
「君なら大丈夫だ。それに、渚がついている。な?」
「おう」
頼もしい表情。
それと目が合い、少しだけ動揺が収まった。
「では、そういうことでいいかな?」
ぐっと拳を握る。
緊張、恐怖、焦燥、不安。
それらの感情は否めないけど。
「はい!」
この胸のときめきには勝てなかった。
私は揺るぎない声で、しっかりと、真っ直ぐな瞳で、返事したんだ。