再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「紗菜を抱かない理由はそんなんじゃない。全部、俺が悪いんだ。紗菜は何も悪くないから、自分を責めなくてもいい」

「……それって、どういう意味?」


彼の無言と沈黙は私の不安を煽る。

そして聞いてはいけないことを口にしてしまう。


「……もしかして、他に気になる人がいるの……? 私と誰かの間で、苦しんでたりする……?」


いろいろな理由を考える中で絶対に考えないようにしていたことだった。

もしかしたら航くんには他に気になる人がいて、私とこれ以上深い関係になるのを避けていたんじゃないかって。

彼の気持ちを疑いたくはないし、さっきは私のことを想ってくれているとちゃんと言ってくれたけれど、私への想いとは別に、他の人への想いが急速に大きくなっている可能性だって考えられる。

この予想がもし当たっていたら、彼はいつか私から離れていってしまうかもしれない。

それが何よりも怖くて、自分が子どもっぽいせいだと思うようにしてきた。

実際にそうだと思っているし、少しずつでも自分を変えていく努力をすることで私は自分を保っていた。

涙が溢れそうになるのを堪えながら航くんのことを見つめていると、航くんは苦しそうな表情を浮かべて私の身体を引き寄せ抱きしめた。


「違う。そうじゃない。俺は紗菜のことしか好きじゃない。これから先もずっと紗菜のそばにいたいと思ってる。……やっと手に入れた紗菜をどうしても手放したくなかった。だから……、先に進めなかった」

「……どういうこと? 私、航くんから離れようなんて一度も思ったことないよ」


航くんから感じる不安を抱きしめるように、私も彼の背中に手を回し力をこめる。

いつも飄々として私のことを簡単に振り回す航くんがこんなふうに弱音を吐くなんて、思いもしなかった。

今までそんな素振りは見せてこなかったのに、彼は一体、何を抱えているの……?
 
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