【完】せんぱい、いただきます。

「先輩ってけっこうたくさん、

グラス持ってますね。」




私は先輩に聞く。


今日もいつもと同じガラスのコップで

コークーハイを飲んでいる。





「俺ね、グラスはこだわってるの。」






そう言って先輩はテレビを消音にした。


そして、手に持っていたグラスを、

カラン、コロン、と氷の音がするように

揺する。





「わかる?俺、この音が好きなんだ。」






高い、カラン、コロンと氷が

グラスにぶつかる音がふたりの空間に

響いている。






「私も、この音、好きです。」






先輩はそのグラスに口をつけた。





少し、赤くなった頬に、

私は気づかないふりをした。







私、先輩のことで知ってること、少ない。







でも、これから知っていけばいいよね。




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