御曹司と恋のかけひき

32話

昼食はいつものように、単品を頼み、雅紀さんはコースを頼んだ。

雅紀さんは、アメフトをやっているかのように、体が大きく、
いつも人当たりのいい笑顔の直哉さんに比べ、あまり表情がなく、
お父さん似だと思わせる。

芸能人を見たいからと言う理由で、家業には関わらず、
テレビ局で働いていると聞かされていた。

マンションは両親が用意した物だが、
それ以上に関しては、家に頼る事もなく、自立した生活を送っている。

「今日は急にすみません」

「いいえ、どうされたのですか?」

「単刀直入に申し上げて、兄に隠し事をされているのですね」

思ってもいなかった話題に驚く。

「ええ」

「兄にはいいません、ただ、僕にだけ教えてもらう事はできませんか?」

「どうしてです?」

「母がまいっているんです」

冷製カッペリーニをフォークにからませながら、ぽつりと話し出しだす、
雅紀さんの話によると。

私に隠し事がある事を、直哉さんより聞いたお母さんが、
とてもショックを受けてしまって、悩んでいる。

私が子供ができない体なのかや、やくざに脅迫されているのかなど、
とんでもない風に、どんどん考えてしまっているらしい。

母は考えだすと、思いつめる所があるから・・・と雅紀さん。

「えっと、申し訳ありません」

「いやいや、話を大ごとにしているのは、兄と母ですから」

「そんな隠し事という程の物でもないんです、
ただ、直哉さんって食事いいお店に連れて行ってくれるでしょう?
なので、料理を作れる事を秘密にしているんです」

「ああ、そうなのですね」

そう言う雅紀さんも、ほっとした表情になり、
心配をかけていたんだなと、申し訳なくなる。

「母にだけ、伝えておきます、
それと、デザート美味しいですよ、いかがですか?」

まったく直哉さんと外見が違うながら、
直哉さんと同じような事をいう雅紀さんに、思わずほほ笑んだのだった。
< 32 / 38 >

この作品をシェア

pagetop