きんもくせい。
あじさい


自分でいうのもなんだけど、多分私は幸せ者だと思う。



「あかねー!今日、放課後カラオケ行く?」


「あー、いくいく!当たり前じゃん!」


「やった、あかねくると盛り上がるからさ。じゃ、あとでね~」



クラスメイトの一人が、私にそう言いながら手を振って、教室を出ていった。


当の私は今一体何をしているのかというと……



「……大塚。お前、今日カラオケ行けるのか?」



教卓の前に座っている先生が、こちらをにらんでくる。



「先生、私の本気舐めてます?こんなの1分あれば余裕ですから~」


私は笑顔でそういって、再び、目の前にある作文用紙に目線を戻す。


そう。


ただいま私、大塚あかねは校則違反のピアスがばれたため、反省文を書いている最中。


今までショートカットだったということもあり、髪で耳を隠せばピアスをつけていることはばれなかった。


しかし、髪が今では肩までつく長さになったため、ピアスをつけていることを忘れ髪を縛って学校へ行ったら、生活指導の先生につかまりこのざま。


放課後に原稿用紙2枚分の反省文なんて、高校に入って何回かいたことか。


いわゆる私はこの学校にとっては問題児らしい。


だけど、周りを見てみれば、もっと書いている人だっているし、私なんてまだかわいいものだと思う。


だって、なんだかんだ言って、こうして放課後きちんと残って怖い怖い生活指導の先生の前で反省文を書いているのだから。



「お前は、成績も優秀だし、周りともうまくやれるのに、なんでこう校則を破るんだろうな」




先生が、ため息まじりにそう言うのが聞こえたが、そんなの返す言葉は決まってる。



「だって、楽しいほうをしたいんだもん」



勉強は嫌いじゃないし、できないよりできたほうがいい。


だから勉強する。


容姿は悪いよりいいほうがいい。


だからおしゃれをする。


人生一度の高校生活、楽しくないより楽しいほうがいい。


だから、周りともうまくやろうと努力する。



「よし、できた!」



私は椅子から立ち上がり、先生の前へ原稿用紙2枚を持っていく。


先生は、眉間にしわを寄せながらもそれを受け取り、私の目を見てくる。



「大塚。今を楽しむのも大事だと思う。

だけど、お前は頭がいいからいずれわかると思うが、優先順位を間違えるな。あとで泣くのはお前だぞ?」



先生はそう言って立ち上がり、「もう帰っていいぞ」といって、教室を出ていった。







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