好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】


海雨の姿と声で、しかしどこか違う響き。


「最初って……始祖当主って呼ばれる……?」
 

海雨は、自分の胸に手を当てた。心臓のあたりだ。


「梨実海雨というのは今の名前というだけで、わたしはずっと影小路暮無の意識のままなんです」


「―――」
 

影小路暮無の意識のまま? 


くれない、というのが始祖当主の名前だというのも、澪は最近知ったばかりだ。


「……みんなに犠牲を強いてまで取り戻した旦那様です。転生したからといって、他の方と生涯を共にするのは、みんなへの裏切りだと思っています。……旦那様以上に愛せる方が、いるとも思えませんし」
 

そこで、海雨は顔をあげた。


薄ら微笑をたたえる。


「わたしは、わたしの命を生きます。それは梨実海雨の命であり、影小路暮無の命です。わたしは、澪さんの隣には相応しくない。……澪さんだけを愛してくださる方が、きっと現れます。ですから――


「それって」
 

拒絶しようとする海雨を、澪が遮った。


「『梨実海雨』ちゃんをすきでいるのは、俺の勝手ってこと?」

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