愛し紅蓮の瞳

妃の座をかけて

***

温かい……。
ふわふわして、気持ちいい。


フカフカの布団と、布団とは違うもっとあったかい何かが私をギュッと包み込んで……。


ん?


「……眩しっ」


薄いすだれ越しに差し込む光に目を細めて、私は今この状況を必死に整理中だ。


体を起こそうと力を入れれば、そんな私の力よりももっと強い力でグイと引き寄せられ、あろうことか再び温もりの中へと舞い戻る。


私を抱きしめる、温かくて力強い腕。
耳元で規則正しく聞こえてくる寝息。


───そう言えば、昨日……!
そこまで思い出して、カァッと頬が熱を持っていく。


「……ぐ、紅蓮!起きて、朝だよ」


昨日あれから、紅蓮が眠りに落ちるまで時間はかからなかった。

スヤスヤと規則正しい寝息を響かせて、そのくせ私を抱きしめる腕の力を緩めることはなかった紅蓮に、不覚にもドキドキを感じてしまった。

挙句、そんな状況だっていうのに素直に空腹を訴える自分の腹の音に一人苦笑いを零した。


だって仕方ないじゃん。

東里の離れを出る時に「少し早いけど食べていきなさい」と出してもらったお母さんの手作りご飯も、


緊張と不安の渦に飲まれて、結局のところ半分以上残してしまったのだから。
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