その男、カドクラ ケンイチ





保健室のドアを開けると、そこには信じがたい光景が広がった。



「・・・・・」



割れた窓。
床に散らばったガラス。



保健室の窓が全て割られていた。





「一体・・誰がこんなこと・・・」



カドクラはしばらく呆然とする。




「朝来たら…こうなってました。」


モモイもショックを受けている様子だった。






「モモイ先生、ガラスを踏んだら危ないんでとりあえず僕が掃除します。」



カドクラは掃除道具入れからほうきを取り出す。




「大丈夫です。私も手伝います。」



二人は床に散らばったガラスを掃除し始める。














ズキッ

「うっ…」







ーーーーーー




「ハァハァハァ。
もう勝負はついた!お前の負けだ。」


「そう・・いうのは・・
俺が・・死んでから抜かせ・・・」



「やめろオザキ。
これ以上お前を傷つけたくない。」



「止められる・・もんなら・・
止めてみろやー!!」





ーーーーー







“カドクラ先生大丈夫ですか
カドクラ先生
大丈夫ですかカドクラ先生“




「カドクラ先生!」



「はっ。」



カドクラが横を見ると、涙目のモモイがいる。



カドクラは膝をつき、モモイが必死に肩を揺らしていた。




「す、すみません。
ちょっと急に頭痛がしちゃって。」




「急にしゃがみ込んじゃうから…私…」



そっとモモイの手を取りカドクラは礼を言う。















「こりゃひでぇな。」



声がしたので二人は後ろを振り向く。



入り口にはエンドーが立っていた。



「エンドー先生…」


「なに?泣いとるのモモちゃん。」



「だって……」



エンドーはハンカチを渡す。




「手伝うよ。大丈夫かカドクラ。」


「すみません。僕は平気です。」


「派手にやってくれたな。」


「誰がこんなこと。」


「偶然だと思うか?」


「え?」


「昨日は自販機。今日は窓ガラス。」


「ま、まさか…」


「あぁ。恐らく自販機も故意に壊された。

・・・

どうやらすんなり夏休みには入らせてくれないようだな。」







第19章 完

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