その男、カドクラ ケンイチ






最終下校時刻が過ぎる頃、部活が終わった生徒達が帰宅していく。


一部の生徒は自転車置き場や部室に残り喋っている。








2年6組の生徒 ダテ ゆーへいは制服に着替え、武道場を出る。




「よっ。」


「ういっす。どうしたんすか?」



武道場の前でカドクラが待っていた。



「俺も今日は帰るところなんだけど、途中まで一緒に帰らない?」


「ニケツは勘弁してくださいよ。」












ーーーー





カドクラはダテと一緒に帰宅する。



「何かあったんすか?」


自転車を引きながら歩くダテがカドクラに尋ねる。



「ダテって昨年は1年6組だったんだよね?」


「そうだけど。」


「タカハシの事が知りたい。」


「タカハシ?
じゃあやっぱ噂は本当なんすか?」


「噂って・・・?」


「保健室の窓割ったのはタカハシだってみんな噂してるんすよ。」


「そうなのか・・・。」





カドクラはYESともNOとも答えなかった。






「タカハシは高校入学する時にこっちのほうに引っ越してきたから地元が全然知らんとこなんすよ。」


「県外からうちの学校受験したのか。」



「俺も詳しくは聞いてないけど、あいつ中学ん時、いじめられてたらしい。」



ダテは話を続ける。



「しかも当時の担任は助けるどころか、“お前が悪い”って感じでいじめに加担してたんだって。」


「教師がいじめをしていたのか!?」



「だから先公みんな憎んでるんじゃないの。

1年の時、タカハシに乗せられて俺らも面白半分でナガノに嫌がらせしてたけど、あいつだけはマジだった。」





カドクラは頭の中を少しずつ整理していく。




「そんなことがあったのか・・・。」



「あいつとはあんま関わらんほうがいいっすよ。
最近何考えてるのか分からないし。」


「だけどお前にとっては友達なんだろ?」


「まぁ…。」





今度はダテがYESともNOとも答えなかった。






「教えてくれてありがとうなダテ。」


カドクラは真っ直ぐ前を見た。








第22章 完

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