その男、カドクラ ケンイチ




足がないカドクラは学校の自転車を借りて全速力でこいだ。


電話の相手は男ということしか分からなかったが、

傷害事件が起きた“末丸地区”の名前が出たことでカドクラに不安がよぎる。




コンビニに寄り、公園の場所を聞きつつ
カドクラは末丸公園へとたどり着いた。






「ハァハァハァ。」





わりと大きな公園だった。

息切れしながらもカドクラは辺りを見回す。


暗闇の中だが数100m先のベンチに人影が見えた。




「ダテー!!」



カドクラは自転車を置き人影に向かって走る。






「・・っ・・・え?」


カドクラの目に全く想像もしていない光景が飛び込んでくる。








「カ、カドクラ!・・先生。」


確かにダテ ゆーへいがいた。


同じく2年6組の生徒アカイ ショウコと一緒に。





「な、な、こんばんは。」


カドクラは混乱状態に陥り謎の挨拶をする。





「何してるんですか?」



肩まで綺麗に伸びた髪。
アイドル顔負けの小顔。

アカイ ショウコが尋ねる。



「いや、いやいやお前らこそ何やってるの?
ていうかアカイ、もう風邪は治ったの?」


「もう大丈夫です。」


「それは良かったけど・・。」






(よくよく考えたらダテの家は末丸地区ではない。

でもダテがいる。・・・アカイと一緒に。

・・・??????・・・)






小一時間自転車を盛りこぎ、
軽く酸欠状態のカドクラの思考回路は冷静ではなかった。






「や、やっぱお前ら仲良いんじゃん。」




「俺帰るわ。」

ダテが立ち上がる。




とその時、懐中電灯の光が3人を照らした。



「お前ら何やっとるんじゃ!!!」


現れたのは見回りをしていた生徒指導のタケダだった。







「い、タケダ先生・・」



バッターン




カドクラは過呼吸に陥り意識を失った。








第8章 完
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