キッチン・シェア〜びっくりするほど気づいてくれない!〜
「すいません!居心地が良すぎて居眠りしてたみたいで……」

寒川は少しぼうっとする頭をぱしぱしと叩きながら、急いでキッチンへ向かう。

「いいよいいよ。疲れてたんだよ。好きな方選んで」

と言って差し出されたのは、

「……美味そう……」

ふわっと立ちのぼる湯気と、生姜焼きの香ばしさ。細かく千切りにされたキャベツとトマトが添えられて、彩りばっちりだ。

「あ、よかったらご飯をついでくれますか? はいしゃもじ」

「は、ハイ!」

寒川は無我夢中でご飯をよそう。

「はー、お腹すいた。食べよっか!」

すごい。これは何だっけ、けんちん汁だ。あの短時間でこんなにすばらしい料理ができるなんて。

「じゃあじゃあ……。寒川くんの引っ越しを記念して、いただきます!」

満面の笑みで、さおりが合掌した。
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