溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「中野さん、風邪ひいたら俺を呼んでください。澪が心配して俺まで落ち着かない」


そうは言うけど、一番心配していたのは大成さんだ。
おそらく“遠慮なく頼ってほしい”と言いたいのだろう。


「大成さんを呼ぶと、高くつきそうだ」

「もちろんです。このお礼はたっぷりしてもらいます」


大成さんはそう言ったあと、ふと真剣な表情を作る。


「それと……俺の戻る場所がありました。ありがとう、ございます」


最後にちょっとだけ素直になった大成さんに、思わず笑みがこぼれる。
きっと中野さんが、大成さんが戻れるように根回しをしてくれていたに違いない。


「なんの話でしょう」


それなのに、中野さんはとぼけて、おかゆを口に運んだ。



それから三日。
中野さんはすっかり熱も下がり、またバリバリ働いているらしい。

大成さんはハウスキーパーとしての残りの日々を、本当に丁寧な仕事をしてこなした。
そして……仲間たちに惜しまれながら、去ることになった。
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