溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
やっぱり怒らせたらまずくない?
いやでも……彼の人生を棒に振って、融資を受けるのもどうかと思うけど。


「澪って、百面相がうまいね」

「はっ?」

「眉間にシワ寄せたり、ハッとしたり、表情変わりすぎ」


そんなことは初めて言われた。
だけど、彼の話を聞いていたら、いろんな顔になっちゃうよ。


「実力で別の銀行から借りればいいだけの話だ」


そんな簡単に言うけど、ホテル建設の資金って、諭吉さん何枚いるのよ……。


「ふぅー」


私が思わずため息をつくと「今度は真っ青な顔してる」と笑われてしまった。


「だって、なんだかよくわからないうちに、ドレス着せられてパーティに引っ張っていかれて、いつの間にか恋人になって……」

「あー、はいはい。テンパってるわけね」


まさにその通りだ。


「澪はなにも心配しなくていいんだよ。あとは俺がちゃんとする」


そりゃあ、私にはなにもできない。
だって、ただのハウスキーパーだもの。


「……はい」


渋々うなずくと、「とりあえず帰ってゆっくりしよう」と彼はマイペースだった。
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