溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「澪。お前、男に騙されやすそうだな」

「え……」


騙されるもなにも、特定の男性とそんなに親しくなったことすらない。


「けど、もう大丈夫だ」

「どうしてですか?」

「俺がいるからに決まってるだろ」


なにがどう決まっているの?
かみ合わない会話を不思議に思っていると「遅刻するぞ」と言われて慌ててサンドウィッチを口に入れた。


彼はプレジールを出たあと、アルカンシエルの裏玄関まで送ってくれた。


「ありがとうございました。あの、大成さんは……」


そういえば、スーツ姿の彼が今日どうするのか聞きそびれている。
まさか、退職届を出したりはしないよ、ね……。


「中野さんに会う約束になってる」


それを聞いて、ホッとした。
昨日のことを『うまく処理しておきます』と言っていた彼なら、大成さんを退職させたりしないと思ったからだ。

私が口角を上げると、彼は小さくうなずく。


「行ってきます」

「うん、それじゃ」


本社に行くのかもしれない。
彼は車を発進させた。
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